クラファンで購入していたFJ1が先月届いたので1ヶ月使っての感想を書く。 2023年に開始してから2024年10月までに発送予定となっていたが延期してようやく完成して届いた。
https://www.makuake.com/project/fj1/
FJ1とは
FJ1は、ミューシグナルという仙台の企業が開発しているGODJ Plusの後継機器。 元々のGODJ Plusの開発元であるJDSoundの倒産の経緯や、ミューシグナルとの関係性については、下記で紹介されている。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/1453451.html
バッテリー駆動、スピーカー搭載、PC不要といったGODJ Plusの特徴を引き継ぎつつ、バッテリー容量や画面解像度、プロセッサなどが大幅に改善したほか、現在のDJシーンに合わせてUSBメモリを基本的なストレージとして変更している。
レビュー
2025年11月2日現在のFW最新である0.3.13をベースとしている。
想定用途と期待
セカンドデバイスとして自宅でトラックリストを作ったり、ミックスして遊ぶ用を想定。
また、できたらクラブイベントではなく1人で長時間プレイしないといけないケースでPCDJの代替として持っていけるといいなくらいを期待して購入した。
クラブ等では現場の機材を使うだろうし、複数DJがいる中での切り替えコストを考えるとそこに持ち込もうとは思っていない。
良い点
携帯性
このデバイスを購入する最も重要な理由がこれだと思っており、期待通りだった。 バッテリー駆動でサイズも小さく、軽量かつスピーカー搭載なので持ち運びに便利、家の中で簡単にミックスして遊びたい時などにも椅子に座りながら膝にのせてDJを楽しめる。スピーカーの音質もこのサイズとしてはとても良い。
キャンプなど野外やDJイベント以外でも使える他、機材が不安定な現場であったり、機材が揃っている現場でも持っていくとプレイ前の確認だったり現場でプレイ前の選曲の調整時などにも使えると感じた。
AlphaThetaのハイエンドの一体型のデバイスと比較して軽く持ち運びに便利という点で差別化ができているように感じる。
USBが2ポート
USBポートが2つ搭載されているため、B2Bでのプレイも可能。
このデバイスと購入層が近いと思われるAlphaThetaのOMNIS-DUOは1ポートしかなく残念だったので優位性があるように思う。
クラブなどでのプレイにはUSBデバイスを持ち込むことがほとんどなので、同じような感覚で準備不要でシンプルにプレイできるのが良い。
ヘッドフォンも2ポート
前述のUSBポートと並んでヘッドフォンのポートも2つある。 B2Bの場合に便利なのはもちろんだが、B2Bでない場合でも交代がスムーズにできる。
楽曲解析・ロードが高速
大体2秒くらいあれば読み込んでくれる印象。
気になる点
USB読み込みが不安定
届いてすぐにこれまでCDJでのプレイで使っていたUSBを指してみたが読み込みができなかった。
届いた当初はまだ取説も出ていなかったので何が悪いのか分からずフォーマットし直したり色々なUSBを試してみたりを繰り返すことに。
その後、取説が公開されて確認すると、FW 0.3.13 現在対応しているファイルシステムはFAT32, exFATのみで、HFS+は利用できない。
また、パーティションはMBRかGPTが対応となっている(GPTは0.2.4以降のみ)。SSDやHDDの接続は非推奨とのこと。
手元でHFS+やスーパーフロッピー(パーティションなし)で楽曲管理しているUSBがあるので刺してみた認識しなかった。
とはいえ、この要件を満たしていても認識しないことが多々ある。 ネットで調べた限りだと、
- 他メーカーのDJ機器でフォーマットを行なったUSBを認識できない(公式Xより)
- メーカーによって認識できないメーカーがある?
- 楽曲数が多いと認識できない?
というような不具合がある模様。
手元でも楽曲数を増やした途端に認識しなくなるというケースがあった。機器がB2Bでも使えるように設計されている一方で、この弱点によってB2Bで使うのが困難になっているので、FWのアップデートで解決することを期待するしかない。
BPM解析
BPM解析はキックが強調されている曲などではある程度正確に出るものの、音数が多い楽曲などでは4つ打ちでも正しくない値が計測されるケースがたびたびある。半分になるならまだ良くて、128の楽曲が96などで計測されることも珍しくない。BPM解析が失敗していると当然だがAUTO SYNCも使えない。
DJなら耳で合わせろというのは分からなくもないのだが、ある程度耳で合わせたとしてCDJなどと違ってJOGダイアルがないため微妙な調整が難しい。再生しながらとなると徐々にBPMを上げ下げして調整するしか思い浮かばない。せめて一度メモリに記録された値を手動で上書きできるようになっているとありがたい。
AUTO SYNC
記憶が正しければリリース当初は合わせる拍がくるまで待機してその拍がくると再生を開始する挙動だったように思うが、アップデートによって近い拍の位置まで徐々に調整される挙動に変わっていた。当初よりはこの挙動は使いやすくなったように感じる。
一方で個人的には以下が使いづらくて基本OFFにしている。
- 半拍で合わせようとしても徐々にAUTO SYNCが効いて前か後ろに合わせようとしてしまう。
- 再生中の曲のAUTO SYNCをONにしたまま、次の曲をロードすると再生中の曲のBPMが変わってしまう。120前後の楽曲再生中にBPM解析が失敗して90などになると急に速度が落ちてトラブルになる。
試してみて絶対に問題ないトラックリストの時だけ使うのが良さそう。
気になっていたがアップデートで改善された点
微妙だなと思っていた点が、かなり早くアップデートで修正されていたので良かった。
ヘッドフォン再生
初期のFWではヘッドフォンが片方の楽曲しか再生できなかったが、アップデートで改善していた。
自分はミックスされた状態の出音をヘッドフォン内で確認してからフェーダーを入れたいタイプなのと、自宅で音が出しづらい深夜の時間などはヘッドフォンでミックスをして遊ぶことがあったので、この対応はかなりありがたかった。
感想
普段家でプレイする上でメインのターンテーブルやミキサーを全然触らなくなるくらいにはFJ1で遊ぶようになった他、空き時間にミックスして楽しむ機会が格段に増えた。 デカいデバイスはそれはそれでいいものなのだが、小さいデバイスならではの良いポイントがしっかり出ている製品でとても良かった。
初心者の最初の1台としては、前述のまだ不安定な点が気になるのでなかなかオススメしづらいのだが、CDJやPCDJをある程度使いこなしている人の次の機種としてはとても良いと思った。
即座にアップデートで問題が解決されたりしていてとても印象が良く、今後のアップデートにも期待したい。